小学生(高学年)、中学生、あるいは大学入試を控える高校生年代が、「幼い子供の憧れの職業」ではなく、リアリティのある将来のキャリアイメージを持つための、様々な方法論を紹介します。
総合型選抜や学校推薦型選抜(公募制)では、将来のキャリアイメージから逆算して、大学をどのように活用したいのか? 具体的な計画があるかどうかが問われます。
大学側へのアピールに説得力をもたせるためには、中学・高校年代で積極的に活動しておく必要があり、早期にキャリアイメージを具体化する必要に迫られます。
しかしながら、10代前半では、社会を知る機会が限られるため、簡単なことではありません。
総合型選抜、学校推薦型選抜(公募制)の入試形態としての特徴は、将来のキャリアイメージが必須である点です。
親世代の主流であったテスト入試(一般選抜)は、文部科学省が昭和の時代から是正を進めようと取り組んできているとおり、学力検査偏重の問題の多い入試方式です。
大学側の視点に立つと、「テストでこのくらいの点が取れる」という基準でしか、受験生を選抜できません。
しかしながら大学は、社会で活躍できる人材の養成機関です。
学力も一つの基準にはなりますが、それだけでは、大学の強みや環境を活かして、活躍できる人材に成長してくれるのか、本当の意味で判断することはできません。
大学側が、理想の学生候補を見つけるために掲げているのが、アドミッション・ポリシー(求める人物像)や、ディプロマ・ポリシー(学位授与方針)です。
一方で、受験生側が、自分の成長に最適な環境となる大学に巡り合うために必要なのが、将来のキャリアイメージです。
それも、幼い子供にとっての憧れの職業のような曖昧なイメージではなく、自分と地続きの、現実味のある10年後、20年後です。
将来このような仕事をしていたい、暮らしをしていたい、というイメージがあれば、そのための成長の場として、どのような大学が最適なのか検討できます。
大学側も、受験生がこのように具体的にイメージできているかを問います。
総合型選抜、学校推薦型選抜(公募制)では、すべての出発点は、将来のキャリアイメージになります。
総合型選抜や学校推薦型選抜(公募制)では、アドミッション・ポリシーやディプロマ・ポリシーをしっかり読み、大学・学部の特徴を理解した上で、
「将来、こういう仕事がしたい(社会の課題を解決したい)から、自分にとって最適な成長の場は、この大学・学部です」
と、大学側にアピールすることになります。
ここで重要なのは、口で言っているだけの受験生よりも、実際に行動している受験生のほうが、はるかに説得力がある事実です。
「環境問題に関心がある」と言いながら、中学・高校時代になにも行動を起こしていないのであれば、本気度を疑われて当然です。
つまり、総合型選抜他では、中学・高校時代をどのように過ごすかが、非常に重要です。
必然的に、どのような環境の高校を選ぶかが肝になってきます。
たとえば環境問題への関心を武器に、総合型選抜を目指すなら、環境問題についての教育や体験プログラムに力を入れている高校を選んだほうが、目に見えて有利になります。
また、こうした活動に時間を割くためには、強度の高い勉強を強いられる進学校は向かない、などの可能性もあります。
大学入試同様に、高校入試も、親世代の常識では、「とにかく勉強を頑張って、自分の学力で入れるいちばん上の高校に入るもの」という感覚の方が多いはずです。
大学入試の常識が変わるとともに、高校入試の常識も変わってきています。
高校選びが重要であるということは、志望する高校をある程度イメージする中学2年生〜3年生春くらいまでには、将来のキャリアイメージがあったほうが良い、という結論になります。
中学受験をする場合は、さらに早まり、中学受験のために学習塾に通い出す10歳〜くらいで、ある程度のキャリアイメージが必要になります。
なぜなら、中高一貫校は、一度入ってしまえば、中高6年間がほぼ決まってしまうためです。
あとから、うちの子に最適な環境ではなかったかもしれない……とならないよう、慎重な検討が求められます。
このように、総合型選抜や学校推薦型選抜(公募制)では、将来のキャリアイメージの具体化は、早ければ早いほどよいと言えます。
中学・高校年代を計画的に過ごせるかどうかで、総合型選抜での有利不利が大きく変わってきます。
実際、付け焼き刃では対策が間に合わないケースも多数見られますので、余裕を持って早め早めの意識で、子どもたちのサポートをしてあげたいところです。
キャリアイメージを具体化する時期の理想は、中学受験をする場合は10歳〜、公立中学を選ぶ場合でも、高校を決める14歳前後となります。
しかしこれは、親世代の感覚からすると、極めて難しいことのように思えるはずです。
親世代の大学入試と言えば、とにかく必死で受験勉強をして偏差値を上げることでした。
「やりたいこと」など、大学に入ってから探せばいい、なんなら卒業後に見つければいい、と言われてきたものです。
実際、卒業間際の就職活動が始まる時期になって、初めて将来を考え始めた、という方も少なくないでしょう。
成人を迎えた後でも簡単なことではないのに、ましてや10代前半で、将来の具体的なキャリアイメージを持つことなどできるのだろうか、というのが、多くの方の率直な感想であるはずです。
しかし、いくら困難であるからと言って、やらなければ、現代的な入試方式(総合型選抜等)では、不利になってしまいます。
なにより、子どもが自分で将来をイメージして、必要なこととして学業に向かうのと、親や環境に半強制される形で勉強させられるのでは、成果がまったく変わってきます。
困難ではありますが、やる価値のあることです。
子どもにとっても、中学・高校・大学と取り組んできたことが、将来に直結しやすいわけですから、極めて無駄がなく、大きなメリットになります。
無理だと否定から入るのではなく、どうすれば10代前半で将来の具体的なキャリアイメージを持てるのか?と前向きに悩み、試行錯誤したいものです。
将来、どのような暮らしがしたいか、どのような仕事につきたいか、など、キャリアイメージを具体化するには、まず、選択肢を持つ必要があります。
当然ですが、なにも検討材料がない状態で考えたことは、ただの空想であり、現実味のない夢でしかありません。
ポイントは、社会や世の中についてよく知ることです。
そこでは人が、何を思い、どのように働いているのか、どのように暮らしているのかがわかって初めて、自分の将来を検討できるようになります。
とは言っても、ただ中学生活、高校生活を送るだけでは、社会や世の中を知る機会は極めて限られてしまいます。
たとえば、公立学校でもキャリア教育がありますが、これで将来をイメージできた、という子どもは多くはないでしょう。
こうした観点からすると、中高一貫校や、私立中学・高校では、将来を考える機会を重視しており、さまざまな体験を用意しているケースがあります。
学校選びの一つの指標になりえます。
文部科学省は、公立学校の教師向けにキャリア教育の手引きを公開しています。
こちらの資料を念頭に、公教育におけるキャリア教育が、なぜ実効性に欠けるのかを分析すると、次の3つが言えます。
公教育がどのようなものかを考えるときに、たとえば、なぜ学習塾が無数に存在し、これを利用する家庭が非常に多いのか、という問題について考えると、理解がしやすくなります。
本来、学校の勉強だけでしっかりした成績が取れるのなら、学習塾は必要ないはずです。
しかし現実には、小学校はともかく、中学・高校と学習のレベルが高くなるにつれ、塾なしではやっていけない子が多発します。
学力を左右するのは、演習の量です。
人の脳は自然に記憶を欠落させるようにできているため、一度教わっただけでは知識は定着しません。「習った知識で、実際に問題を解く」ことを繰り返さなければ、テストの成績を上げることができないわけです。
たとえば英文法の説明のわかりやすさであれば、学校の教師もプロですから、塾の講師と決定的な違いはないと見るべきです。
違うのは、時間が限られているかどうかと、行動を強制できるかどうかです。
学校では、9教科のほか、学活や道徳や行事もあり、使える時間は限られています。学力をあげるために演習をさせようとしても、授業+宿題程度しか、時間を使うことはできません。
また、強制もできません。授業を真面目に受けない、宿題をやってこない子がいても、指導することができるだけです。
一方の学習塾は、成績を上げるために利用するわけですから、塾側の指導方針に沿って勉強をすることになります。
半強制的に演習を繰り返すことになり、当然のように学力は上がります。
このように公教育の役割は、結果へのコミットではなく、最低保証の教育を、すべての国民に等しく届けることになります。
もちろん、教師個々で、子ども一人ひとりの成長に全力を傾けてはいるでしょう。
しかし、役割としては一人も取りこぼさないことが大命題であり、学級担任一人で30〜40人程度を見なければならないわけですから、できることとできないことが明確に存在します。
私たち家庭側としては、「活用の仕方次第なんだ」という事実を念頭において、学力はもちろん、キャリア教育についても考える必要があります。
家庭で、子どもの将来のキャリアイメージの具体化をサポートしようとしたときに、実際にどのような手順で、何をすればいいのでしょうか?
最初のハードルは、子ども本人が、自分で自分の将来について考える態勢になれるかどうかです。
社会の荒波から守られた環境で育ってきている子どもたちにとって、「大人になった将来」などというものは、完全に未知の世界です。
中には、不安を覚える子もいるでしょう。
また、14歳前後という発達段階を考えると、自立心が育つ一方で、社会との関わり方を模索する時期でもあり、心身共に不安定になるのが普通です。
いきなり将来について考えろと言われて、すぐに受け入れられる子は稀でしょう。
まず大切なのは、一回で性急に解答を得ようとしないことです。
子どもの側にも、心身をアジャストする時間が必要です。
可能であれば、中学校に進級する前後くらいから、「14歳くらい(中2)になったら、将来について考えないとね」と何度か伝えておくといいでしょう。
いざ将来についてコミュニケーションする際も、半年はかけて結論にたどり着くくらいのつもりでいましょう。
1回目は、反発する子や、なにも具体的なイメージが湧かず「わからない」としか返してこない子もいると思います。
それでも、考え始めただけで、一歩前進と考えます。
けっして、急かしたり、責任を押し付けたりしないようにします。
「1ヶ月後にまた相談しよう」など、期限を明確にすると、スムーズに進めることができます。
将来についてコミュニケーションするときのポイントは、最初から「なりたい職業」を答えさせようとしないことです。
たとえば、獣医になりたい、弁護士になりたい、と言ったところで、中学生がこれらの職業の何を知っているのか?と言えば、ほぼなにも知らないケースがほとんどでしょう。
幼い子どもが、宇宙飛行士になりたい、プロ野球選手になりたい、と言うのと同じ「憧れの職業」でしかなく、リアリティのある将来のイメージにはなりません。
そこでまずは、10年後、15年後に、どのような暮らしをしているのが理想か? から考え始めます。
「金持ちになってタワマンに住んでいたい」「お金を稼いで、推し活を頑張りたい」「南の島でのんびり暮らしたい」
などなど、漠然としたイメージでかまいません。
親も、自分の10年後を同時に考えて見せるといいでしょう。またここでは結論を出すことが目的ではなく、後で変えてもいいのだと伝えておくと、子どもも答えやすくなります。
どんなアイデアでも、肯定します。否定したり、からかったりすれば、その時点で考えるのをやめてしまうと思っておきましょう。
大切なのは、「大人になった将来」というものは、自分で選択でき、ハンドリング次第でどんな形にもできる、ワクワクの塊なんだとわかってもらうことです。
(逆に、勉強するべき、仕事をするべき、など義務や責任を前面に押し出してしまえば、将来=ネガティブなものというイメージになってしまい、キャリアの具体化は進みません)
理想の10年後を書き出せたら、次に、そのために何をすべきか? どうしたら理想の10年後が実現できるか? を考えます。
ここは、人生の先輩であり、社会経験豊富な親の出番です。
たとえば「金持ちになってタワマンに住んでいたい」なら、高給が得られる職業の例を、思いつく限り提示してあげます。
「南の島でのんびり暮らしたい」なら、たとえば観光業、環境保護の調査研究、農業や水産業など、南の島にある仕事をリサーチしてあげます。
なにか一つでも引っかかるものがあれば、その職業につくために、どのような高校・大学を選び、どのような知識・スキルを磨けばいいのか、検討を始めることができます。
ポイント
並行して進めたいのが、進学先の候補の検討作業です。
「大人になった将来」は一番遠い目標ですが、中学生にとっての高校進学は一番近い目標であり、比較的イメージしやすく、「やらなければ」という気持ちにもなりやすいはずです。
遠近両面からアプローチしていくことで、将来についての考えが深まることにも繋がります。
探究入試や総合型選抜においては、将来の目標から逆算して、実現のために高校時代に実際に行動したか? が問われます。
そのため、旧来の偏差値での高校選び(=可能な限り勉強を頑張って、入れる一番上の高校に入る)をしては、うまくいきません。
一つは、海外で英語を活かして仕事をしたい、研究者になりたい、工学系の仕事につきたいなど、方向性が固まっている場合は、その職業にあった高校を探す方法があります。
こうした道筋が明確ではない場合や、知識と経験の厚み・多彩さで勝負する場合は、校外活動がしやすい学校を選ぶ選択肢もあります。
たとえば、芸能人を多数排出する堀越高校(トレントコース)や、プロ野球選手を多数排出する横浜高校(アクティブコース)などが該当します。
中学2年生になったら、春と秋の文化祭シーズンに、積極的に高校の文化祭を訪問しましょう。
子どもに合いそうな高校はもちろん、合わなそうな高校も含めて、いろいろな高校に行ってみるのがおすすめです。
「この高校だったら通ってみたい」という思いが出てくれば、将来のキャリアイメージの具体化の材料にもなりますし、なによりその高校に入るための勉強にも、自分から向かうきっかけになります。
東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城、栃木、群馬、静岡の文化祭一覧 – スタディ高校受験
また高校だけでなく、大学の文化祭やワークショップ等を体験するのもおすすめです。こちらはより将来のキャリアイメージの具体化に繋がりやすいので、目標にあった大学を選ぶと効果的です。
たとえば、職業図鑑を読んでも、キャリアイメージの具体化には繋がらないケースがほとんどです。
最大の要因は、そもそもその職業に興味がないためで、単なる知識のインプットで終わってしまいます。
つまり、まずは興味・関心が先だということです。
しかし資料から得られる情報では、具体性を欠き、「なるほど、こんな仕事に就けたらおもしろそうだ」と感じるまでは至らないケースがほとんどでしょう。
だからこそ重要なのが、実体験であり、実感です。
たとえば、弁護士という仕事に興味を持たせるのであれば、裁判の傍聴に連れ出す必要があります。実際に弁護士に会ってコミュニケーションし、弁護士になった理由や、やりがい、大変なこと、どのような高校・大学生活を送ってきたか等を聞くのも効果的です。
また、こうした実体験や実感は、多ければ多いほど良いものです。
なぜなら、少ない選択肢から1つを選ぶよりも、多くの選択肢から1つを選んだほうが、人は納得感を抱きやすいためです。
私たちは時として、天職・自分に合った職業みたいなものが、どこかに隠されていて、それをなんとかして探し当てなければいけない、と考えてしまいます。
しかし、実際にはどこかに隠されているわけではなく、様々な経験をしてみて、相対的に、「ああ、自分がやりたいことはこれだ」と気づくものです。
合う・合わない、興味のある・なしに関わらず、多様な経験をさせてあげましょう。
「これは違うな」と確信を持てるだけでも収穫ですし、当初は興味を持っていなかった職業が魅力的に見えてくるケースもあるでしょう。
ポイント
たとえば、中学生の子どもが「弁護士になりたい」「獣医になりたい」と言っているとき、それはなぜなのか、明確な道筋をもって説明できるでしょうか。
単なるイメージや、ステータスから、憧れているだけというケースも少なくないでしょう。
しかし、幼い子の憧れの職業のようなレベルでしか考えられていないのであれば、そこから将来のキャリアのイメージを具体化していくことは困難ですし、途中で「こんなはずではなかった」と頓挫する可能性も十分にあります。
たとえば、「獣医になりたい」というケースであれば、理由を「動物が好きだから」と回答するかもしれません。
しかし、獣医は、常に動物の死と向き合わなければならない職業です。
また、飼い主とのコミュニケーションの難しさ、クレーム対応など、心身の負担は非常に大きいとする意見もあります。
もっと中学生にとって目の前の課題では、獣医学部に進学するためには、難易度の高い外国語や数学の勉強が必要になります。
こうした教科が苦手であれば、大きな困難が待ち受けていることになります。
だからこそ、「憧れの職業」のような曖昧なイメージではなく、自分と地続きの、リアリティのある具体的な目標に変えていく必要があります。
この場合もやはり、実体験・実感が重要です。
「弁護士になりたい」「獣医になりたい」と言うのであれば、その職場を実際に見たり、本業の方とコミュニケーションしたりする機会を見つけてあげましょう。
ポイント
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