野生動物に会いに “北の果て” へ旅をする!「世界自然遺産・知床|野生動物探し(秋)」開催レポート
「日本は自然豊かな国である」とよく言われますが、世界自然遺産・知床は、その中でも明らかに群を抜いていて、よりかね隊長が「国内ナンバーワン」と断言する、野生動物の宝庫です。
ヒグマ、エゾシカ、オオワシ(翼を広げると2.5m)など、特に大型動物にかけては、右に出る地域はまずありません。
それだけではなく、地球レベルで見ても特徴的な生態系を持ち、絶滅危惧種や固有種も多く生息しています。
そんな、日本だけれど日本じゃない、北の大地の果てで、多感な10代前半が、自分の世界を圧倒的に広げるプログラム。どのような体験ができるのか、詳しくレポートします!
飛行機で「女満別空港」または「中標津空港」へ
世界自然遺産である知床半島は、北海道の東の果てにあります。
おおよそ、網走と根室の中間に位置し、すぐ目の前に、国後島を始めとする北方領土があります。オホーツク海に面しています。
首都圏からのアクセスは、もちろん飛行機。女満別空港または中標津空港の利用で、どちらからも車で1時間30分ほどです。
1日目:さっそくナイトサファリへ!
世界自然遺産・知床プログラムは、秋と冬の年2回。どちらも唯一無二の体験ができる、まったく違った内容での開催です。
秋は学校行事やテストも多いため、3連休に開催することになりますが、たった3日間では体験も急ぎ足!
1000km以上の大移動をして、ホテルにチェックイン&夕食を食べたら、さっそくナイトサファリへ出発します。
世界自然遺産・知床での現地ガイドは「ピッキオ知床」に依頼しています。
知床には何度も視察に行ってプログラム開発をしましたが、その中で、
「この人たちなら、間違いなく、子どもたちの好奇心に全力で応えてくれる!」
と確信を持てたのが、ピッキオ知床のみなさんでした。
ひとことで言えば、「仕事でやっているというよりも、本当に知床や生き物が好きだからやっているんだなぁ」という実感が、ひしひしと伝わってくる、そんな人たちです。
ホテルまで迎えにきてくれた車に乗り込み、いざ出発。
野生動物なんて、普通はそうそう会えるもんじゃないわけですが、知床では違います。
市街地からほんの数分で世界自然遺産の構成地域に入りますが、すぐにエゾシカの群れを目撃。そのすぐ後にキタキツネに出会います。
車の窓のすぐ向こう、意外なほどの至近距離に、野生動物たちがいるわけで、当然、子どもたちの興奮の声が、車内に響き渡ります。
この日は残念ながら、ヒグマには会えませんでしたが、この秋は3回に1回くらいの頻度で、出没しているそうです。
知床半島は、ヒグマの生息密度が世界有数。
これが何を意味するかというと、あれだけの大型哺乳動物が、近い距離で共存できるほどに、餌が豊富にある地域だということです。
2日目・午前:川へ鮭の遡上を見に行く
豊かな大自然があり、ヒグマが高密度で生息できるほどに、動物の餌も豊富にある知床半島。
その象徵とも言えるのが、川を遡上するシロザケやカラフトマスの存在です。
橋の上から川を覗き込むと……
子どもたちから思わず
「すげー!」
「あれ、手を突っ込んだら絶対にとれるでしょ!?」
という声が上がるほど、たくさんのサケ・マスが泳いでいます。
※川を遡上するサケ・マスは採取禁止です。海側も、河口の両サイド500mは禁漁となっていますので、ご注意ください!
知床がこんなにも豊かな理由は?
すべての起点は、厳冬期に、ロシア・アムール川の河口周辺から、はるばる流れてくる、流氷だと考えられています。
流氷は、アイスアルジー=植物プランクトンを運んできます。
植物プランクトンを餌に、動物プランクトンが育ち、それらを餌にする海の生き物たちが育ちます。サケ・マスもその一つです。
海の生きものが豊かだと、それらを餌にする海鳥や、アザラシなど海棲哺乳類、ヒグマなど陸生哺乳類が生きていくことができます。
川を遡上して産卵したサケ・マスは力尽きますが、死体は陸地にリンを始めとするミネラル成分を運ぶことになります(動物が食べたあとの糞もそうです)。
リンは植物にとって欠かせない栄養素であり、草食動物をも支えることになるわけです。
こうした流氷を起点とする、特徴的な食物連鎖こそが、知床半島を世界自然遺産たらしめている理由です。
2日目・午後:原生林トレッキング、そして絶景!
昼食を食べたら、午後は原生林に入って、野生動物探しをします。
天気が良ければ、知床連山の見事な風景も見られます。これが冬開催では、こうなります。
どちらの季節の景色も見たいですよね。
さらにオマケで、羅臼岳(一番手前の山)の頂上からの景色は、こんな感じです。
2020年の秋に、プライベートで登ってきました。右奥に見えているのは国後島です。
(プログラムでは登りません!標高はそれほど高くないのですが、200mくらいから登るので運動強度がかなり高く、トレッキング中級者以上向けです)
さらに海岸沿いの絶壁からの景色も!
どこから見ても日本離れしている、すごい景色です。
そんな知床連山を背に、原生林へと分け入っていきます。
道なき道を進むので、子どもたちにもワクワク感があります。
実は、整備された木道歩きだと「疲れた」という愚痴ばかりが聞こえてくるのですが、原生林トレッキングではそれがないんです。
原生林トレッキングでは、野鳥やエゾシカを筆頭に、エゾリスやシマリス、キタキツネなどに出会える可能性があります。
なお、ヒグマに遭遇する可能性もゼロではありません。対処法をしっかり身につけているガイドさんなしでは、なかなか足を踏み入れられませんね。
ちなみに、熊が出ると本州では射殺されますが、知床では、熊が出たエリアに人間が近づかないという対処をします。野生動物たちの棲み家に、人間がお邪魔するわけです。
そして最奥部では、オホーツク海の絶景に出会えます。
この原生林は、冬にはスノーシューをはいて野生動物探しをするのですが、オホーツク海には流氷が押し寄せています。
原生林トレッキングを終えると、日没の時間でした。
オホーツク海の水平線に沈む夕日! 雄大な風景であるのはもちろん、色が素晴らしいんです。
3日目・早朝:サケ・マスの水揚げ量が日本一!水揚げを実際に見学
知床半島の玄関口、斜里町は、サケ・マスの水揚げ量で日本一です。
ウトロ漁港には「ウトロ鮭テラス」という見学施設が無料開放されており、誰でも水揚げの様子を見学できます。
巨大な網とクレーンで水揚げされる、大量のサケ・マスに、思わず子どもたちも見入ってしまいます。
サケ・マスは定置網漁なのですが、海岸沿いの道路を走っていると、わりと「すぐそこ」に定置網があるのが見えます。豊かな海を実感せずにはいられません。
定置網には、サケ・マス以外の魚、たとえばブリやフグなども紛れ込みます。
選別は手作業で行わざるを得ないそうです。実際に写真でも、立派なブリやフグの姿が見られますね。
3日目・午前:ウトロ漁港で釣りに熱中!
世界自然遺産の海には、どんな魚がいる? 釣りをしたら釣れるの?
ということで、秋開催では釣り体験を組み込んでいます。
実際、とても簡単に釣れます。
しばらく釣れなくなる時間もあるのですが、そうすると子どもたちは、あれこれ試行錯誤を始めます。釣る場所を移動してみたり、釣った魚を解体して餌にしてみたり、仕掛けを遠くに投げ込もうとしてみたり。
実は仕掛けを投げ込むと、海底の岩礁や障害物に根掛かりして、仕掛けが切れてしまいます。仕掛けのセッティングから自分でやり直しなんですが、これも学びですね。
やってみたいから試してみる。これが成長のためには重要。ちなみに自分たちで解体した魚の切り身では、そこそこ釣れていました。試行錯誤が成功した例です。
釣った魚は、飛行機だと持って帰るのが大変なので、ウミネコやカモメにあげます。
次から次へと釣れるので、海鳥たちもお腹いっぱいになりそう? 帰りの飛行機の時間ギリギリまで、夢中になれる豊かな時間が続きます。
冬開催「流氷ウォーキング編」連続参加で、理解が深まる
秋開催では、たくさんの野生動物に会い、川を遡上するサケ・マスを始めとする、海の豊かな生き物たちを見ることができます。
そしてこれらはすべて、流氷がもたらすアイスアルジー(植物プランクトン)が起点。
なぜこんなにも世界自然遺産・知床が豊かなのか、強烈な実感と共に理解してもらうために、冬の「流氷ウォーキング編」との連続参加がおすすめです。
冬は、ドライスーツを着用して流氷の中に入って遊び、クリオネも探します。これが楽しくてしかたがない!
また野生動物も豊富に見られます。中でも、翼を広げると2.5mにもなる巨大なオオワシは必見。真上を飛んでいくと、本当に心を動かされます。
もちろん、知識のインプットも、ピッキオ知床のみなさんの助けを借りて、しっかりします。
ただ教室で教わっただけでは、十中八九、すぐに忘れてしまうでしょう。しかし、実際に知床に行って、野生動物に会い、釣りや流氷ウォーキングなど、夢中になって遊んでしまう体験があれば、心と記憶に深く刻まれます。
なにより、そこには、実感を伴う本質的な理解があるんです。
冬プログラムは、流氷が流れ着くこの時期だけ! の2月末〜3月上旬開催です。